<第37回投稿 3月>
変わりつつある地域の子ども行事
瑞穂市教育委員会 教育委員 大平高司
私は、市の教育委員とともに、自治会長を6年間務め、その立場から子どもたちと関わっています。夏休みのサマーフェスタやラジオ体操、春祭りの子どもみこしなどです。しかし、田園地帯にある我が校区の小学生数は近年急激に減少し、ここ数年の入学者は20人前後となっています。それが、自治会が関わる地域の行事へも影響してきています。
まず、小学生の数が激減した校区内の自治会で、子ども会が休会となり始めました。比較的人数の多かった我が自治会の子ども会も、今年度から休会となりました。大きな原因は、仕事をもつ近年の若い保護者が、子どもの減少によって当たりやすくなった役員の負担を嫌い、脱会し始めたことです。コロナ禍で行事が中止となり、かえって楽だったという体験も影響している気がします。
そのため、子ども会や中学校の保護者の協力により成立していた自治会行事も、見直しが必要となってきました。自治会役員は、対応を話し合う中で「子どもたちが楽しみにし、地域の大人とふれあう貴重な機会となってきた行事は、自治会役員が運営の主体となり、規模を縮小してでも残そう。それが、彼らが大人になったとき地域に親しみを持ち、協力し合う原点になるだろうから。」と考えました。
担い手がなくなったサマーフェスタの小学生のお楽しみコーナーは、自治会が新たな縁日コーナーを企画し、保護者に協力を呼びかけて実施。中学生が企画・運営してきたコーナーは、負担を軽くして実施。中学校PTA校外委員が運営の中心だった夏休みラジオ体操(2週間程)は、自治会役員が運営を担い、一部校外委員の協力を得て実施。新型コロナ等で中止となっていた子どもみこしは、自治会役員が規模を縮小して再開しました。
というわけで、自治会の子どもたちに関わる行事は、何とか続けています。しかし、これから子どもたちの数がさらに減る中で、地域が子どもたちの成長にどう関わっていったらよいか、私や近隣の自治会長は悩みつつ行事を実施していくことになるでしょう。
田舎だからこそ
白川町教育委員会 教育委員 高木 守
北風が吹く頃になると思い出される小学生の頃の光景がある。小学校の通学班の集合場所に行くと、毎日のようにたき火があった。すぐ横の小さな商店のおばさんが集合場所に集まってくる数名の子どもたちのために落ち葉を集め、店から出る紙や木くずと一緒に燃やしてくれていたのである。吐く息は白く、手がかじかんでいる私たちにとってどんなに嬉しかったことか。やがて「いってらっしゃい」というおばさんの言葉に送られて、2㎞先の小学校へと歩いて登校していたのである。
田舎ほど通学バス利用の昨今。ほぼ家の前から学校玄関までバスに乗る子の体力面の低下だけでなく、地域の人の温かな思いやりに触れたり、異年齢で支え合ったりする機会が少なくなることを心配する。そして移りゆく自然を肌で感じることも減ってしまう。学校の教育活動によって体力向上も思いやりの心の醸成も、様々な自然体験も工夫して仕組まれているのだけれども、登校のように毎日の当たり前な生活の中にこそ子どもたちが自らの感性によって成長できる大事な教育の機会があるように思う。
田舎は都会に比べたら、危険度はうんと低い。そうであるならば、もっと自由に自然の中に仲間と身を浸す教育に力を入れたらいいのではないかと思う。通学も歩かせたらいい。都会ではやろうとしてもできない教育こそ、田舎の教育の魅力であり、そんなところで子どもを育ててみたいと、教育移住を考える保護者が出てきていると聞く。
今では90歳を越えた、たき火のおばさんに「まもちゃん、風邪に気をつけてよ。」と声をかけられる。ここで、こんな田舎で、子ども時代を過ごせたことをいまさらながら幸せだったと感じている。