<第3回投稿 5月>

連携から融合へ

高山市教育委員会 教育委員 長瀬  信

 「郷土高山に根ざし、未来を切り拓くための資質・能力を育みます。」これは、令和2年3月に策定した高山市の第 3 期教育振興基本計画にある地域社会が協働して取り組むべき基本的方向の一つです。教育委員として定例会に出席した当初、当然と思いつつも学校教育の内容が設置している小中学校だけだったことに、高校の教員経験者として何かしらさみしさを感じていたことを覚えています。次代を担う若者を育てることは小中高特共通の目標であるし、決して小中学校で完結できるものでもありません。前述の基本的方向の具現を考えても、高等学校等の話題もそれなりにあるだろうと思っていたからです。多くの自治体では、高等学校や特別支援学校は設置者が違いますが、目標を同じくするものとして身近にある高等学校を強く意識し、関係を深化させていくことは目標の具現に大きな力となるはずです。社会に開かれた教育課程の実現にもつながることです。そのためにも連携するといった関係から一歩踏み込んだ関係、まるごと(融合)といった視点で高等学校を捉え、目標を共有し、一体となった学校教育の展開は大いに意味があります。

高山市では、高等学校等との関係が深まってきていると感じています。若者の力を社会に活かす取り組みにも力を入れ、高校生がまちづくりについて交流できる活動拠点の整備やまちづくりに参画しやすい環境づくりも進めています。教育委員会だけではなく、市の各部局でも以前にも増して高等学校等が意識されてきています。

社会の在り方が急激に変化する時代だからこそ、学校教育は幅広い年齢層で考えることが重要です。確かに高等学校等は設置者がちがう。生徒は広範な地域から通学しているなど小中学校とは様々な点で大きな違いがあります。違いがあって難しいからこそ市町村教育委員会側からの積極的なアプローチは価値があります。

 

教師の幸せ

                      養老町教育委員会 教育長 森島 恵照

 突然の来客がありました。25年ぶりに再会する教え子でした。なつかしさいっぱいで、近況報告を聞きました。そして、「先生は、覚えていますか。」と始まりました。

「先生は、中3の時、これから先いろいろ困難なことに遭うだろうけど、前向きに解決することが大切だと話してくれました。私は、その言葉を忘れず、困ったことがあっても前向きに向き合ってきました。」と話してくれるのです。担任した時のことを思い出しました。

ある日の帰りの会のことです。彼女は、「私に時間をください。」と話すと、教室の前に譜面台を置き、いきなり美しい声で歌い始めました。荒城の月だったと記憶しています。歌い上げた後、「私は〇〇高校の音楽科を受験します。私は音楽が好きで、高校でも続けます…。」と思いを語りました。学級の仲間が大きな拍手をして、「がんばってこいよ。」と掛け声が溢れました。それは、仲間を信じて自分の進路を語る「進路公開」でした。彼女は、前向きに進路に向き合う気持ちを行動で表したのでした。

あの時の一生懸命な姿をずっと持ち続けてきてくれたのかと、感動しました。教師冥利に尽きます。教師は、やりがいのある仕事です。子どもたちの“今”と“将来”に関わることができる素敵な仕事です。同時に、「自分は、教え子に恥じない前向きさを持ち続けているか。」と自問しました。学校現場では、「何か、子どもたちがワクワクすることはできないか。」と、いつも考えてきました。けれど今、コロナ禍の対応が多く、子どもたちのためを考えた前向きな発想ができていません。

この再会は、至福の時であると共に、「そんなことでよいのか。」と叱咤激励された気持になりました。心地よさも叱咤激励も、教師としての幸せだと私は思います。この幸せを与えていただける教師という仕事とかけがえのない出会いに、改めて感謝します。