<第10回投稿 12月>

清涼剤

恵那市教育委員会 教育委員 後藤伸子

 先日、地元東海で活躍する児童劇専門劇団の舞台劇を観ました。

主人公のLGBT(セクシャルマイノリティ)というセンシティブな感情を軸としながらも、大なり小なり誰もが一度は感じた事があるであろう『生きにくさ』の普遍的な感情が散りばめられており、自分を、そして自分とは違う人を大切にしていきたい、そのためにどうしたいかを深く考えさせられる作品でした。最初から最後まで感情が揺さぶられて、最近格段に涙もろくなっている私は、泣き笑い怒り考え、喜怒哀楽のオンパレードとなりました。

劇内では、小学生の子どもが悩みながらも行動することで変わっていく様子がテンポ良く描かれ、一緒に観劇した我が家の12歳の息子と14歳の娘も食い入るように観入っていました。生の舞台は、役者さんのまさに「今」の息づかいがすぐそこで感じられ、タブレットやテレビにはない迫力は圧巻です。

12歳の息子は、特に深刻なシーンでは身体がソワソワ動くのですが、本人は動いていることを全く認識していなかったそう。感想を聞いても「面白かったよ。」と一言の彼はきっと、溢れてくる、言葉にできない感情を受け止めるのに無意識に身体でバランスをとっていたのでしょう。姉には、「隣で気になるで、これからはやめてね」と、後から注意されてましたが。

娘の感想はというと、じっと考えた後に「答えを出さないところがいいな」と。これには、私も『なるほどなぁ』と唸りました。

あえて答を出さない。余地を残す。

前週、たまたま岐阜県美術館で開催の前田青邨展を観た際に、「絵画の余白がいい!」と会話したことも繋がりました。

「○○であるべき」「○○でなければ」という固定概念や強迫観念に囚われているとき、相手に自分の理想を押し付けているとき、余白は無くなっています。相手の余白をも奪っているかもしれません。

劇中の子どもたちは、悩み、クラスメートや家族とぶつかり、それでも実際に接した人々の行動やことばに世界がふっと広がる瞬間がたくさんありました。気持ちが救われる瞬間です。でも、最終的に子どもたちを動かし、決めていくのは、子どもたち自身でした。

実生活でもこの先、自立していく我が家の子どもたちが、余白のない私にぶつかってくることがあるでしょう。(あってほしい。) そんな時、さあ、私はどう答えるのか…。ちょっと楽しみになってきました。

追われがちな毎日の中で、生の舞台に触れることは私にとって一種の清涼剤。これからも、できたら子どもたちも一緒に、楽しんでいこうと思います。

 

子ども達を大きく育てたい

                 大野町教育委員会 教育委員 常冨みどり

 「皆さん,北海道研修は楽しかったですか?」

これは,北海道北見市への国内派遣報告会で,私が最初に児童達にたずねた内容です。一度か二度顔を合わせただけの私の質問に,「はい,楽しかったよ。」と大きな声で返答する子がいたり,“うん,うん”と頷きながら,目で合図する子がいたりと,それぞれ思い思いに私の質問に応えてくれました。会が始まる前には,周りの仲間と楽しそうにおしゃべりしている児童達もいました。学校は違っても仲良く話している姿は,とても好ましかったです。

代表児童の話の後,一人一人が研修で心に残ったことなどを発表してくれました。

「ロコソラーレの人にカーリングのやり方を教えてもらいました。やる前は簡単だと思っていたけれど,実際やってみると,とっても難しかったです。そんな難しいことをやって,オリンピックで銀メダルをとるなんて,やっぱりすごいなあと思いました。」

「前の日に,手の指を怪我したので,みんなと一緒に活動するのは少しいやだなぁと思っていたけれど,北見市の方が丁寧に教えてくれたので,やる気が出てきて楽しかったです。」

「夜に星を見ました。とってもきれいで感動しました。やはり北海道の自然はすばらしいです。」

児童達は,研修で体験したことや印象に残ったことを,自分の言葉でそれぞれ話してくれました。原稿を見ないで話し続ける児童もいたり,途中で詰まってしまい,メモをそっと見ながら話す児童がいたりと,それぞれ個性があって,聞き応えのある報告会でした。聞いていらっしゃった保護者の方々も安心されたのではないでしょうか。

4月初め,私たち教育委員は,『大野町小学生児童国内派遣事業実行委員会』の一員として,今年度の研修を実施するかどうか協議を重ねました。感染症がまだまだ収まらない中,実施することへの懸念もありました。しかし,いろいろなことを体験することは,子ども達の成長にとってプラスになることであり,研修を実施するという結論に至りました。現地で陽性者がでた場合の対応や,研修前の検査をどうするかなど,例年の事前の準備以上のことをやっていかなければなりません。学校教育課のスタッフには頭が下がりました。

 そして報告会。研修を通して,児童達は私が思う以上にたくましくなったと実感しました。これまでも言われてきたことですが,自分自身の目で確かめて,実際に体験することは,児童生徒を大きく成長させるものだと改めて実感しました。多くの仲間とふれ合うことも彼らの成長にとって大きな刺激となるのです。

中学生の海外研修は今年度中止としましたが,近い将来是非実施したいと改めて思いました。

こんな子ども達を,もっともっと大きく育てていくために,やはり学校教育や社会教育は欠かせないと思いますが,大きな課題があります。少子化に伴う児童生徒数の減少です。昭和59年に3,388人であった児童生徒数が今年度は1,847人,令和16年度には913人まで減少するという推計です。こういった状況を受け,大野町では小中学校の適正規模・適正配置を含めた小中学校のあり方について検討を始めています。外部や内部の検討委員会を設け,様々な意見を出し合ったり,町民にはアンケートで意見をいただいたりと,より多くの人たちの考えを参考にしながら,将来の学校をどのようにしていくのか検討を始めています。総合教育会議では,教育委員それぞれが考えを述べ,参考意見とさせていただきました。

小規模校と大規模校どちらが子ども達にとってよいのか,なかなか難しい問題です。小規模校には小規模校のよさ,大規模校には大規模校のよさがそれぞれあります。あらゆる角度から考え,町民の総意を基にして決めていけたらと思います。10年後の学校の姿を見てみたいものです。